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最強の行動経済学 名前が発音しやすい株は、投資額が大きくなる

名前が発音しやすい株は、投資額が大きくなる

明るいオフィスの白い机で、無地の白い箱を2つ並べて見比べる日本人のビジネスパーソン

What you’ll learn

  • 処理のしやすさが信頼感や好感につながる「認知的流暢性」の仕組み
  • 発音しやすい銘柄名の株ほど、投資額が大きくなるという研究
  • Appleのロゴを上に置いたパッケージと、下に置いたパッケージで購買意欲が分かれた実験
  • ブランドの強さとロゴの位置の釣り合いが、実際の商品パッケージにどう生きているか
  • 相良奈美香が博士課程の卒業論文で研究・発表した、処理の引っかかりを指す「非流暢性」と、人を立ち止まらせるその働き

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計20万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学者の相良奈美香です。

アメリカ人の夫の両親の家で、本棚に私の著書が飾られているのを見つけました。しかし、目に入ったとき、「あれ、何かおかしいな」と引っかかりました。というのも…二人は日本語が読めないので、実は、本が上下逆さまに置かれていたんです!

読み慣れた文字なら、すらすら読み流せます。上下逆さまで処理に引っかかると、急に意識が向く。今日はこの感覚の背景にある、「認知的流暢性」のお話です。

「処理が楽」が「良さそう」に変わる

人の脳は、スムーズに処理できた情報を「正しい」とか「好ましい」と感じやすくできています。読みやすいフォント、発音しやすい名前、シンプルなメッセージ。処理が楽な情報は、その楽さが知らないうちに信頼感や好感につながります。

これが「認知的流暢性」です。反対に、処理に引っかかる情報には違和感が生まれ、低く評価されやすくなります。

こんな研究があります。発音しやすい銘柄名の株は、発音しにくい銘柄名の株より、投資額が大きくなるのです。

投資の判断に、銘柄名の発音しやすさは、本来関係ないはずです。それでも脳は、「処理しやすい」を「なんとなく良さそう」に変換してしまう。名前が発音しやすいという理由で投資先の印象が変わるなんて、少し意外ではないでしょうか。

ロゴの位置が、購買意欲を左右した実験

こうした感覚は、商品デザインの世界でも現れます。Appleのハードドライブを想定した実験があります。2つのパッケージの違いは、Appleのロゴが上にあるか、下にあるかという1点です。

購買意欲を高めたのは、ロゴが上の方のパッケージでした。Appleは非常にブランド力の強い企業です。そのような強いブランドは、重力に逆らって上にある方が認知的流暢性が高くなります。つまり、ロゴが上にあることが、「なんとなく」納得できるのです。

一方、Appleほどのブランド力がないGatewayというブランドと比べると、結果は逆になりました。下にある方が、購買意欲が高まったのです。ブランドの強さとロゴの位置が釣り合っていると、見る人に無意識な納得感が生まれます。釣り合っていないと、どこかに小さな違和感が残る。

実際のパッケージにも、この考え方は生きています。プチ高級な立ち位置のブランドは、権威性を出すためにロゴを上部に配置しています。手頃さや身近さを伝えたい場合は、中央寄りに置く。そのブランドらしい位置にロゴがあると、私たちは違和感なく「しっくりくる」と感じ、それが購買意欲につながるのです。

逆さまに飾られた、私の本

冒頭の逆さまの本で起きていたのは、この流暢性が途切れた状態です。この状態のことを、行動経済学では「非流暢性」と呼びます。実はこの非流暢性、私が博士課程の卒業論文で研究し、発表したテーマの1つなんです。

普通のフォントで書かれた文章なら、さらっと読み流しますよね。読みにくいフォントや小さな文字に変わると、読み飛ばせなくなって「なんて書いてあるんだろう?」と目が止まります。

引っかかりには、人を立ち止まらせて、じっくり考えさせる働きもあります。すらすら処理できることが、いつでも良いとは限らないわけです。

顧客の「なんとなく」には出どころがある

商品名やキャッチコピー、パッケージ、提案資料。顧客の「なんとなく良さそう」や「どうもピンとこない」の一部は、情報の処理のしやすさから生まれています。内容を磨いても反応が鈍いとき、伝わり方がつまずいている場合があるのです。

そしてこの感覚は、今日の認知的流暢性のように、行動経済学の概念で説明がつくことがあります。現象に名前がつくと、感覚頼みだった議論に足場ができます。なぜなら、「しっくりこないのはなぜか」を、チームで検討できる問いに変えることができるからです。

FAQ

よくある質問

Q認知的流暢性とは何ですか?

人の脳が、スムーズに処理できた情報を「正しい」とか「好ましい」と感じやすい性質のことです。読みやすいフォント、発音しやすい名前、シンプルなメッセージ。処理が楽な情報は、その楽さが知らないうちに信頼感や好感につながります。

Qロゴの位置で購買意欲は変わりますか?

Appleのハードドライブを想定した実験では、ロゴが上にあるパッケージの方が購買意欲を高めました。Appleのような強いブランドは、重力に逆らって上にある方が認知的流暢性が高くなるためです。一方のGatewayでは結果が逆になり、下にある方が購買意欲が高まりました。

Q「非流暢性」とはどんな状態ですか?

流暢性が途切れて、情報の処理に引っかかりが生まれた状態です。普通のフォントの文章はさらっと読み流しますが、読みにくいフォントや小さな文字に変わると、読み飛ばせなくなって目が止まります。引っかかりには、人を立ち止まらせてじっくり考えさせる働きもあります。

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