What you’ll learn
- 身体が受け取った情報が脳にフィードバックされる「身体的認知」の仕組み
- 笑顔で読むとマンガが面白く感じたクラーク大学Laird博士の研究
- 温かい飲み物に触れた直後は相手を「温かい人」と評価しやすくなること
- 自分が影響を受けている自覚がないまま判断してしまうリスク
- 口角を上げる・背筋を伸ばすなど、体から気分を切り替える使い方
メルマガ読者のみなさん、こんにちは。
行動経済学者の相良奈美香です。
初めて訪問した会社で温かいお茶を出してもらうと、なんとなく相手に好感が持てる。逆に冷たい飲み物だと、少しよそよそしく感じる。こんな経験、ありませんか。
今日はそんな「身体的認知」のお話です。
体が先、脳が後
「身体的認知」とは、脳が身体を動かすだけでなく、身体が受け取った情報も脳にフィードバックされる現象のことです。
脳と身体は双方向につながっています。表情や姿勢、手に伝わる温度といった身体からの情報が脳に届くと、その情報をもとに判断や評価が動きます。つまり、「おもしろいから笑う」というだけでなく、「笑ったからおもしろく感じる」という向きの流れもあるわけです。本人が意識して判断しているつもりでも、それは身体の感覚が知らないうちに判断の材料になっていることがあるのです。
笑顔で読むと、マンガが面白くなる
おもしろい研究があります。クラーク大学のLaird博士の研究です。
被験者に同じマンガを読んでもらいます。意図的に笑顔を作って読んだ場合と、しかめっ面で読んだ場合とで感じ方を比べました。すると、笑顔で読んだほうが面白く感じられたのです。
先に笑顔を作ったことで、脳が「笑っているのだから、楽しいに違いない」と錯覚する。表情という身体の入力が、感情を動かしたわけです。表情と感情の関係を逆方向から確かめた、古典的な研究です。
温かい飲み物が、人の評価を変える
身体的な温かさが心理的な温かさにつながる、という研究もあります。
温かい飲み物に触れた直後の人は、初対面の相手を「温かい人」「親しみやすい人」と評価しやすくなります。逆に冷たい飲み物に触れた直後だと、同じ相手でも「冷たい人」と感じやすくなる。
手のひらに伝わる温度は、相手の人柄とはまったく無関係な情報です。それでも身体的認知が働くと、その温度の感覚が、そのまま人物への評価にすり替わってしまうのですね。
自分も影響を受けているということ
身体的認知で一番意識しておきたいのは、自分が影響を受けている側に立っているのに、その自覚がないまま判断してしまうことです。
会議室の心地よい温度や、出された温かいコーヒー。そうしたものに気分を良くして、相手の提案を「なんとなく信頼できそうだ」と評価してしまう。後から振り返っても、本人は提案の中身や数字のことしか思い出せません。身体感覚の影響は、意識に上らないまま処理されてしまうからです。
大事な契約や人の採用といった、影響の大きい判断でも、入口で受けた印象が最後まで影響することがあります。身体的認知というクセがあると頭の片隅に置いておくだけでも、判断の前に一度立ち止まれやすくなります。
体から気分を切り替える
身体的認知は、自分のために使うこともできます。
イライラしそうなとき、不安が湧いてきそうなとき。試しに、口角をぐっと上げてみる。声を出して笑ってみる。これらを続けているうちに、気分が少しポジティブな方へ動いていく感覚があります。脳が「笑っているのだから、楽しいに違いない」と解釈し直すからです。
口角を上げる、背筋を伸ばす。こうした体の動きは、思い立ったときに自分でできます。気分を上げたい場面では、まず体の方を動かしてみる。これも立派な身体的認知の使い方です。
FAQ
よくある質問
Q身体的認知とは何ですか?
身体が受け取った温度や表情などの情報が脳にフィードバックされ、判断や評価に影響する現象です。
Q温かい飲み物は相手の評価を変えますか?
温かい飲み物に触れた直後は、初対面の相手を「温かい人」「親しみやすい人」と評価しやすくなります。
Q身体的認知は自分のために使えますか?
口角を上げる、背筋を伸ばすなど体を動かすと、気分をポジティブな方へ切り替えやすくなります。






