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最強の行動経済学 習慣化とは?続く仕組みをつくる3原則と5つのコツ【行動経済学】

習慣化とは?続く仕組みをつくる3原則と5つのコツ【行動経済学】

仕事前のオフィスで本を開き、習慣化に取り組むビジネスパーソン(行動経済学・行動科学)

What you’ll learn

  • 習慣化とは何か – 考えなくても行動が始まる状態の意味
  • 習慣化が難しい理由と、意志の力に限りがあるという事実
  • トリガー・障壁・報酬で続く仕組みをつくる「習慣化の3原則」
  • 3原則を補う5つのコツと、途切れたときの立て直し方

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計20万部超のベストセラー。

「トリガー・障壁・報酬の3つは、私が著書で紹介している習慣化の3原則です。仕事に必要な学び直しでも運動でも、どんな行動にも応用できます。気が進まない書類作成や苦手な事務処理など、後回しにしがちな業務にこそ、意志に頼らない仕組みを先に持ってほしいと考えています。」

「習慣化」とは、決まったきっかけの後に、迷わず次の行動が始まる状態をつくることです。行動経済学の知見を使えば、トリガー・障壁・報酬の3つを整えて、無理なく続く仕組みをつくれます。

ジムの契約をしたものの、三日坊主で行かなくなった。そんな経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。人の意志の力には限りがあり、疲れている日や忙しい日まで頑張りで乗り切るのは難しいものです。この記事では、仕事の学び直しや運動、食事の例を交えて続く仕組みのつくり方を解説します。

習慣化とは – 考えなくても行動が始まる状態をつくること

習慣化とは、ある行動を「やるかどうか」その都度決めなくても、決まったきっかけで自然に始められるようにすることです。私たちはふだん、行動するたびに「今日はやるか、やめておくか」と小さな意思決定をしています。きっかけと行動を結びつけておけば、この意思決定をスキップして、自動的に動き出せます。習慣にできれば、疲れている日や忙しい日でも無理なく続けられるのです。

そのために必要なのが、私が「仕組み化」と呼んでいる考え方です。たとえば、お菓子をいつも家にたくさん買い置きしているAさんと、買い置きがまったくないBさんがいるとします。ダイエットを成功させやすいのは、誰が考えてもBさんでしょう。Bさんの家には、手を伸ばせば届くお菓子がそもそもありません。食べすぎない仕組みを先に整えておくことが、ダイエットの習慣につながります。意識しなくても行動が始まり、そのまま続いていく仕組みを整えること。これが「習慣化」です。

習慣化が難しい理由 – 意志の力には限りがある

新しい習慣を始めても続かない背景には、脳の仕組みがあります。実は、私たちは1日に約3万5000回もの意思決定をしています。どちらの靴から履くか、通勤電車でどのつり革を掴むかといった、無意識の選択も含めた数です。

これをすべてじっくり考えていたら、日常生活は回りません。そこで脳は、直感的で速い思考の「システム1」と、注意深く時間をかける思考の「システム2」を使い分けています。

誘惑に流されそうな自分にブレーキをかけるのは、エネルギーを多く使うシステム2の役割です。ところが、疲れているときや忙しいときは、負荷の大きいシステム2を動かす余裕がありません。残業して帰宅した夜に、スマホで何気なく見かけたモノをネットショッピングしてしまう。疲労でブレーキが利きにくくなった典型的な場面です。

ウィルパワー(意志の力)にも限りがあります。私の著書『ポジティブアフェクトで幸せの仕組み化』でも書いたとおり、1日の中で使えるウィルパワーには限界があります。許容量以上を使うと人は消耗して、誘惑に負けやすくなるのです。疲れやストレスがまったくない日々を送れる人はいません。頑張りに頼る方法が長期的に無理を生むのは、このためです。

加えて人には、将来の大きなリターンよりも目先の小さな楽しみを優先する性質があります。この傾向は現在志向バイアスと呼ばれ、先延ばしの背景にもなっています。続かない自分を責める前に、脳の仕組みを前提にした対策を立てていきましょう。

習慣化の3原則 – トリガー・障壁・報酬で「続く仕組み」をつくる

続く仕組みは、3つの原則でつくれます。トリガーをつくること、障壁をなくすこと、報酬を用意することの3つです。私の著書『行動経済学が証明する最高の勉強法』では、勉強を習慣化するための3原則として、この3つを解説しました。3原則は勉強に限らず、運動やダイエット、貯金の習慣にも活用できます。

原則1 トリガーをつくる – 「〇〇した後」に行動を結びつける

「明日こそやろう」と決意しても、気がつけば1週間、1か月と過ぎてしまう。その原因は、行動を促す具体的な「トリガー」がないことにあります。トリガーとは、「〇〇したら△△する」という行動のスイッチのことです。

たとえば、通勤電車で座席に腰を下ろしたら、すぐに英単語アプリを起動する。会社のデスクに着いたら、学びたい分野のテキストを1ページ開く。いつも無意識にやっていることに、新しい行動をぴったりくっつけるイメージです。

トリガーを設定するときは、次の4点に注意してください。1つめは、トリガーを必ず「〇〇した後」に設定すること。人は行動の後にしか約束を思い出せないため、「寝る前に」や「ご飯の前に」といった設定はうまく機能しません。

2つめは、すでにやっている行動を使うことです。新しい行動をトリガーにすると、そのためのトリガーがまた必要になってしまいます。

3つめは、「お風呂から上がった後」のように、毎日だいたい同じ時間に必ず行う行動を選ぶこと。4つめは、トリガーと行動を1対1で結びつけることです。食後に皿洗いをする習慣がある人が、同じタイミングに英単語の暗記を足すと、毎回どちらにするか迷ってしまいます。

原則2 障壁をなくす – 始めるまでの壁を先回りして取り除く

2つめの原則は、行動を妨げる「障壁」をなくすことです。障壁とは、目標とする行動の実行を妨げたり困難にしたりする阻害要因のことで、主に4つに分けられます。私自身、朝のランニングを習慣にしようとしたときは「着替えるのがめんどう」という障壁に気づき、ランニングウエアのまま寝ることにしました。

1つめは「物理的障壁」で、必要なモノや場所が足りないことによる壁です。参考書が手元にないといった壁を放置すると、脳にサボる言い訳を与えてしまいます。あり得る障壁を先回りして書き出し、作業する場所のデフォルトも決めておきましょう。

2つめの「知識的障壁」は、どの教材が合うかわからないといった、情報やスキルの不足から生まれる壁です。迷ったときは、今の自分にとって一番始めやすい方を機械的に選びましょう。

3つめの「心理的障壁」は、面倒くさい気持ちや不安から生まれる抵抗感です。この壁は、後で紹介する報酬やスモールステップで乗り越えられます。

4つめの「社会的障壁」は、人の目を気にすることで生まれる壁です。ダイエット中に職場の飲み会を断りにくい、大人が学び直しを始めるときに周りの目が気になる、といった場面がこれに当たります。

壁の正体を知っていれば、続かないときも自分を責めずに「これは物理的障壁だな」と気づき、対策を考えられます。

原則3 報酬を用意する – 声に出して自分を褒める

3つめの原則は、行動の後に「報酬」を用意することです。行動経済学では、日常の淡い感情を「アフェクト」と呼び、なんとなく心地よいものを「ポジティブアフェクト」と呼びます。報酬が欠かせないのは、このポジティブアフェクトを生むためです。

ある心理学の研究では、ポジティブアフェクトによって視野が広がったり、長期的な判断ができるようになったりする傾向が確認されています。ポジティブアフェクトが仕事にもたらす効果は、別の記事で詳しく解説しました。行動の直後に報酬を受け取ると、その行為と心地よい感情が結びつき、脳が「これは快いことだ」と学習するのです。

報酬には3つの種類があります。ケーキや洋服のような「物理的報酬」と、上司に認められたり同僚に褒められたりする「社会的報酬」。そして、達成感や成長の実感といった「情動的報酬」です。

物理的報酬は毎日用意するのが難しく、継続性が低いのが弱点です。社会的報酬は効果が大きい一方、他人に依存するため毎回得られるとは限りません。最も大切なのは、自分の力ですぐに生み出せる情動的報酬です。

具体的には、行動を終えたら「今日もできた!」と声に出して自分を褒めましょう。声に出せば、自分の耳で言葉を受け取れるからです。くり返し口にするうちに、褒め言葉を自然と信じられるようになります。これは、くり返し見聞きした情報を真実だと信じやすくなる「真理の錯誤効果」によるもので、実証されている心理現象です。

私自身は、業務の進行管理を任せているAIに「進捗が良かったらしっかり褒めてほしい」と入力し、毎日称賛のメッセージを受け取っています。実行したことを記録に残すのも、自分を褒める材料になります。

習慣化を軌道に乗せる5つのコツ

3原則で仕組みをつくっても、途中で行動が途切れることもあるでしょう。そんなときの打開策として役立つのが、次の5つのコツです。

コツ1 スモールステップで取り組む

最初の一歩は、拍子抜けするほど小さくします。「アプリを3分だけ」や「テキストを1ページ読む」といった低いハードルから始めましょう。気が進まない書類作成も、とりあえず鞄からパソコンを出してデスクに置くところから始めれば、取りかかりやすくなります。

いざ始めると、「せっかく始めたんだから」という埋没コストの心理が働き、3分を過ぎても自然と続くものです。仮に毎日3分で終わったとしても、1年続ければ18時間以上の積み上げになります。毎日5分なら、年間30時間です。

コツ2 周囲に公言する

目標を周囲に公言すると、「言ったからにはやらなくちゃ」と自分を後押しできます。宣言によるプレッシャーも、強すぎなければ良い刺激になるでしょう。私は苦手な事務処理案件なら、「この仕事は15時までに終わらせるからね!」と周囲に宣言します。

コツ3 やらない選択肢を持たない

残業で帰宅がいつもより2時間遅くなった日に、「今日はやめておこうか」と迷う。「やるか、やらないか」の2択になった時点で、人は「やらない」を選んでしまうものです。

お風呂に入るかどうかを、毎日迷う人はあまりいません。考えるのは「いつ入るか」や「どれくらい入るか」でしょう。習慣にしたい行動もやることを前提にして、疲れた日は5分だけにするなど、時間と量を選ぶのです。

コツ4 アイデンティティーをつくる

何かを始めるとき、人は無意識に「自分という人間に合致した行動か」を考えます。この「自分らしいキャラクター」を「アイデンティティー」と言います。「自分は朝が弱い」という思い込みが、早起きにブレーキをかけることもあるのです。

思い込みの影響を示唆するのが、アメリカに古くから根付いている「女性は数学が苦手」というステレオタイプを利用した心理学の実験です。男女の学生を2つのグループに分け、まったく同じ数学のテストを受けてもらいました。違いは、性別を聞かれるのがテストの「最後」か「始まり」かという点だけです。

「最後」に聞かれたグループでは、男女の平均点に差はありませんでした。一方、「始まり」に聞かれたグループでは、女子学生の平均点が男子学生よりも明らかに低くなりました。

思い込みは味方にもできます。私は20代の頃に「自分は砂糖を食べない人間だ」というアイデンティティーをつくり、周囲にもそう伝えました。今では、もう20年くらい甘いもの全般を食べていません。習慣にしたい行動も、「自分は〇〇する人間だ」と先に決めておきましょう。

コツ5 時間を基準にする

最後のコツは、習慣が軌道に乗ってから使うものです。行動量が増えてきたら、「15分経ったらやめる」のように時間でやめどきを決めます。ページ数を基準にすると、その日ごとに迷いが生まれるからです。

キリの悪いところであえてやめると、続きを終わらせたい気持ちが次の行動につながります。やりかけのものを終わらせたいという、「ツァイガルニク効果」と呼ばれる完了欲求が働くためです。迷う余地を減らすほど、習慣は続けやすくなります。

習慣が途切れたときの立て直し方 – フェーズに合わせて仕組みを見直す

3原則のどこに力を入れるべきかは、習慣化のフェーズによって変わります。ゼロから始める初期は、トリガーを意識的に設定することが欠かせません。習慣になってきた頃には、成果が出ないと不安になるモチベーションの壁がやってきます。

報酬の存在感が増すのは、中期以降です。人は、見返りのない行動を何度もくり返すことはできません。新入社員が毎朝大きな声であいさつをしても、先輩たちが目も合わせてくれなければ、その声は徐々に小さくなるでしょう。習慣を確かなものにするには、リターンを止めない仕組みが必要です。

出張や繁忙期で習慣が途切れると、現状維持バイアスが働き、「やめたまま」でいたくなるものです。ただ、長い目で見れば、挫折は一時の中断にすぎません。途切れたのは、フェーズが変わって今までの仕組みが合わなくなったサインです。3原則を見直し、ゼロからのスモールステップで再開しましょう。

私自身、最近はAIの勉強に挑戦していて、落ち込む日もあります。それでも勉強が続いているのは、落ち込んだ日でも自然と手が動くように、意志の力に頼らない仕組みを先につくってあるからです。勉強を例にした仕組みのつくり方は、『行動経済学が証明する最高の勉強法』で詳しく紹介しています。

まとめ

習慣化とは、決まったきっかけの後に、迷わず行動が始まる状態をつくることです。人の意志の力には限りがあるため、頑張りに頼る方法は長く続きません。続く仕組みは、トリガー・障壁・報酬の3原則で整えられます。

仕組みが行き詰まったときは、5つのコツが助けになります。スモールステップ・周囲への公言・やらない選択肢を持たないこと・アイデンティティー・時間の基準の5つです。習慣が途切れたら、自分を責めずに仕組みを見直し、小さな一歩から再開すれば大丈夫です。

続ける努力より、続く仕組み。これが、習慣化について私がいちばんお伝えしたいことです。まずは、明日の行動に結びつけるトリガーを1つ決めるところから始めてみてください。

FAQ

よくある質問

Q習慣化の3の法則とは?

私の著書『行動経済学が証明する最高の勉強法』で紹介している習慣化の3原則は、トリガー・障壁・報酬の3つです。いつもしていることの後に新しい行動を結びつけ、始めるまでの壁を取り除き、やり終えたら自分を褒めます。この3つを整えると、意志に頼らず行動が続く仕組みができます。

Q習慣化を成功させるコツは?

まずは、最初の一歩を拍子抜けするほど小さくすることです。ほかに周囲への公言や、やらない選択肢を持たないこと、アイデンティティーづくりも役立ちます。習慣が軌道に乗ったら、時間を基準にやめどきを決めましょう。

Q習慣化とはどういう意味ですか?

ある行動を、その都度「やるかどうか」決めなくても、決まったきっかけで自然に始められる状態にすることです。習慣にできれば、疲れている日や忙しい日でも無理なく続けられます。

Q習慣化が難しい理由は何ですか?

人の意志の力に限りがあるからです。私たちは1日に約3万5000回もの意思決定をしていて、疲れているときほど自分を律するブレーキが利きにくくなります。頑張りに頼らず、行動が自然に続く仕組みを整えることが大切です。

Q習慣化できない人の特徴は?

続かない原因としてまず考えられるのは、行動を始めるトリガーがないことです。また、「自分は続かない人間だ」という思い込みも、行動にブレーキをかけます。トリガーを決め、望ましい自己像を先につくっておくと、習慣化を進めやすくなります。

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