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最強の行動経済学 商談を止める「検討します」の突破法

商談を止める「検討します」の突破法

打ち合わせの席で、テーブルに広げられた多数の資料を前に、決めきれない表情で考え込む日本人のビジネスパーソン

What you’ll learn

  • 商談の「検討します」が「今は決めきれない」のサインで、その理由の多くを売り手側がつくっていること
  • 話を重ねるほど相手の処理が追いつかなくなる「情報オーバーロード」が、「よく分からなかった」という感覚を残すこと
  • プランやオプションが多すぎると人は選ぶこと自体をやめてしまう「選択のマヒ」の仕組み
  • 「よく分からないもの」を「良くないもの」と受け取る「認知的流暢性」が、商談でも起きること
  • 決めきれない原因を見分けると、情報を絞る・見せ方を変えるといった打ち手が増えること

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計20万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学者の相良奈美香です。

商談の最後に「検討します」と言われて、そのまま話が進まなくなる。提案やお願いごとでも、似たような経験はないでしょうか。

今日は、この「検討します」がなぜ出てくるのか、というお話です。鍵を握るのは「選択のマヒ」という行動経済学の考え方です。

「検討します」は「決めきれない」のサイン

そもそも「検討します」とは、どういうことでしょうか?その正体は「今は決めきれない」という状態です。そして、決めきれないのには理由があって、その理由の多くは、実は売り手の側がつくり出しています。

脳がいっぱいになると、人は選べなくなる

では、なぜ決めきれないのか?その理由の一つが「情報オーバーロード」です。

営業やプレゼンの場では、つい話しすぎてしまう。「素晴らしい商品です、こんな機能も実績もあります」などと、伝えたいことを次々に重ねる。ところが、受け取る側の処理能力には限りがあります。情報が多すぎると、脳は処理しきれません。残るのは「たくさん聞いたけれど、よく分からなかった」という感覚だけです。

選択肢についても同じです。プランやオプションが豊富だと、一見親切に見えます。しかし、選ぶ側は、どれが自社に合うのか分からなくなる。人は選択肢が多すぎると、選ぶこと自体をやめてしまうのです。これを「選択のマヒ(decision paralysis)」と呼びます。特にBtoBの商談は金額も責任も大きいぶん、簡単には決められません。だからこそ、この選択のマヒが「検討します」という言葉になって表れるのです。

「よく分からない」は「良くない」に化ける

もう一つ、知っておきたい脳のクセがあります。人は「よく分からないもの」を「良くないもの」と受け取りやすい、ということです。簡単に理解できないものは避けておこう、と脳が判断してしまう。これを「認知的流暢性」と呼びます。

例えば、自動車の自動運転に、なんとなく不安を覚える方は多いと思います。仕組みや安全性がよく分からない。だから危なそうに感じてしまう。この「よく分からない=良くなさそう」という受け取り方は、商談でもそのまま起きます。理解が追いつかない提案は、中身を吟味される前に避けられてしまうのです。

売り手にだけ見えていること

ここには、売り手が陥りやすい思い込みもあります。自分が扱う商品は、毎日触れているため、頭に入っている。何年も売ってきたなら、考えなくてもスラスラと説明できます。

しかし、初めて聞くお客様にとっては、すべてが初耳です。脳にかかる負荷はまるで違います。売り手に当たり前に思えることが、買い手にはまったく伝わっていないことが多くなるのも、これが原因です。また、商談の後に追加の資料を送りたくなるのも、この思い込みと関わっています。ただでさえ情報でいっぱいの相手に、さらに積み上げてしまうわけです。

ビジネスにどう効くのか

「検討します」と言われると、多くの人は、もっと情報を届けようとします。しかし、決めきれなさを解くのは、たいてい逆の方向です。何を減らし、どう見せて、相手の不安をどう消していくか。そこから先は、設計の話になります。

行動経済学の観点から見ると、相手がなぜ決めきれないのかを、メカニズムとして言葉にできるようになります。「なんとなく渋られた」で終わっていた場面の原因が見えてきます。情報が多すぎて処理が追いついていないのか、それとも、よく分からないから避けられているのか。

原因が分かれば、打ち手は機能の追加だけではなくなります。情報を絞る、見せ方を変える、不安を先に消しておく。勘や経験だけのときには思いつかなかった選択肢が増えていきます。これが、ビジネスに行動経済学を持ち込む価値だと、私は考えています。

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FAQ

よくある質問

Q選択のマヒとは何ですか?

人は選択肢が多すぎると、選ぶこと自体をやめてしまいます。これが「選択のマヒ(decision paralysis)」です。プランやオプションが豊富だと、一見親切に見えます。しかし買い手は、どれが自社に合うのか分からなくなります。特にBtoBの商談は金額も責任も大きいぶん、簡単には決められません。だからこそ選択のマヒが「検討します」という言葉になって表れます。

Q「よく分からない」提案が避けられてしまうのはなぜですか?

人は「よく分からないもの」を「良くないもの」と受け取りやすいためです。簡単に理解できないものは避けておこう、と脳が判断してしまいます。これを「認知的流暢性」と呼びます。自動車の自動運転になんとなく不安を覚えるのも、仕組みや安全性がよく分からないからです。商談でも同じで、理解が追いつかない提案は、中身を吟味される前に避けられてしまいます。

Q「検討します」と言われたあと、追加の資料を送るのは有効ですか?

「検討します」と言われると、多くの人はもっと情報を届けようとします。ただ、決めきれなさを解くのは、たいてい逆の方向です。ただでさえ情報でいっぱいの相手に、さらに積み上げることになるからです。処理が追いついていないのか、よく分からないから避けられているのか。原因が分かれば、打ち手は機能の追加だけではなくなります。情報を絞る、見せ方を変える、不安を先に消しておく。勘や経験だけのときには思いつかなかった選択肢が増えます。

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