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最強の行動経済学 私が朝食を10年以上変えていない理由

私が朝食を10年以上変えていない理由

固定化したシンプルな朝のルーティン(選択肢オーバーロード・「決めないことを決める」のイメージ)

What you’ll learn

  • 選択肢が多いほど選べなくなる選択肢オーバーロード
  • 購入率が逆転したペンの実験
  • 「相手」だけでなく「自分」の選択を楽にする視点
  • そもそも選ばないようにするという考え方
  • 決めないことをあらかじめ決めておく実践法

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計19万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学者の相良奈美香です。

突然ですが、私は10年以上、朝食をほぼ変えていません。水とお茶、ファット・フューエルのコーヒー、植物性プロテインのシェイク。出張のときも、これらは必ずスーツケースに入れて持っていきます。

こう書くと「ストイックですね」と言われたりするのですが、私としては逆で、ラクをするためにこうしています。

今日は「選択肢オーバーロード」のお話です。「決めないことを決める」という、ちょっと不思議な考え方についてご紹介します。

選択肢が多いほど、人は選べなくなる

選択肢オーバーロード(Choice Overload)とは、選択肢が多すぎると、人はかえって選べなくなってしまう現象のことです。

「多いほうが親切」とか「選べる自由があるほうがいい」と、私たちはつい考えがちです。ところが行動経済学の研究では、ある一定のラインを超えると人は比較することに疲れて、結局は「選ばない」という結論を下してしまうことがわかっています。

有名な実験のひとつに、ペンの購入率を選択肢の数を変えて調べたものがあります。選択肢が2本だと購入率は約40%。10本まで増やすと約90%まで跳ね上がり、「選べる楽しさ」がぐんと効きます。ところが、そこからさらに増やしていくと購入率は逆に下がりはじめ、20本になると2本のときよりも低くなりました。

つまり、選択肢が多すぎると、人は「自分にとって何がベストか」を見極められなくなり、判断を放棄してしまうのです。

「相手」の話だけではない

この話は、お客様や上司にどう選択肢を提示するかという「相手」向けの設計の話として語られることが多いように思います。3案ではなく、2案に絞る。プランの数を整理する。それは、たしかに大事な視点です。

でも今日は、視点を変えて、「あなた自身が」選択しやすくなる話をしたいと思います。

ビジネスパーソンは日々、無数の選択にさらされています。どの案件を優先するか。どの資料にどれだけ時間をかけるか。誰に任せるか。メールの返信をすぐに返すか、後回しにするか。

従来の経済学の前提では、これらをすべて比較し、熟考したかえで決めるのが理想とされます。しかし、情報も選択肢もあふれている現代のビジネス環境で、それは現実的ではありません。考えすぎて結局どれも決められない、という方がむしろ問題です。

そもそも選ばないようにする

では、自分自身が選択肢オーバーロードから抜け出すには、どうすればいいのでしょうか。一つの有効な方法が、「そもそも選ばないようにする」という考え方です。

冒頭でお話しした朝食の話が、まさにこれにあたります。

私の朝は、まず水とお茶から始まり、カリフォルニアでよく飲まれているファット・フューエルという、1杯およそ200キロカロリーのコーヒーを飲みます。その後に、植物性プロテインをベースにした、ビタミン・ミネラルを加えた栄養シェイクを摂る。これが10年以上ほぼ固定のメニューです。

私は移動や出張が多い生活なので、これらは必ずスーツケースに入れて持っていきます。そうすると、どこに泊まっていても一貫した食生活で1日を始められます。さらに、「朝ごはんはどうしようか?」「コーヒーはどこで買おうか?」と考えなくて済む分、脳のリソースと時間を、もっと大事な意思決定に回せるのです。

もう一つ、私が「決めないこと」にしているのが服装です。リモートのミーティングで着る服は、基本的に黒。あるいは気に兣った服を、ネットで色違いやパターン違いでまとめて買っています。

こうしておくと、買い物の意思決定の負荷も、「今日は何を着ようか?」という朝の悩みも、両方が大きく下がります。

「決めないこと」を、あらかじめ決めておく

朝食や服装は、そもそも結果に大きな差が出ない選択です。

それでも、「今日は何を食べよう?」「今日は何を着よう?」と毎朝考えていると、その分だけ脳のリソースは消費されています。判断の数だけ、エネルギーは消費されていく。

毎朝の朝食。会議で使う定例資料のフォーマット。メールの返信パターン…。こうした「考えなくてもいいこと」をあらかじめ決めておく。そうすることで、本当に重要な判断のときに、システム2を使って丁寧に考える余裕が生まれます。

大事なのは、ルーティンで生活を埋めつくすことではありません。「ここは決めなくていい」と自分で線を引いておく。それを意識するようになってから、判断にかかる負担が惃像以上に減ったというのが、私自身の実感です。

みなさんの日常にも、「ここは決めなくていい」と切り分けられそうな場面はありませんか?気がつかないうちに、毎回ゼロから考えてしまっているものがあるかもしれません。

FAQ

よくある質問

Q選択肢オーバーロードとは何ですか?

選択肢が多すぎると、人はかえって選べなくなってしまう現象です。「多いほうが親切」と考えがちですが、ある一定のラインを超えると人は比較に疲れて、「選ばない」という結論を下してしまうことが研究でわかっています。

Q選択肢が増えると購入率はどう変わりますか?

ペンの実験では、選択肢が2本のとき購入率は約40%、10本まで増やすと約90%まで跳ね上がりました。ところがそこからさらに増やすと購入率は下がりはじめ、20本になると2本のときよりも低くなりました。選択肢の多さは、ある点を超えると逆効果になります。

Q「決めないことを決める」とはどういう意味ですか?

朝食や服装のように結果に大きな差が出ない選択を、あらかじめ固定してしまう考え方です。「ここは決めなくていい」と自分で線を引いておくと、脳のリソースと時間を本当に重要な判断に回せます。判断の数だけエネルギーは消費されるため、その負担を減らす方法です。

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