What you’ll learn
- 選択肢が多いほど選べなくなる選択肢オーバーロード
- 購入率が逆転したペンの実験
- 「相手」だけでなく「自分」の選択を楽にする視点
- そもそも選ばないようにするという考え方
- 決めないことをあらかじめ決めておく実践法
メルマガ読者のみなさん、こんにちは。
行動経済学者の相良奈美香です。
突然ですが、私は10年以上、朝食をほぼ変えていません。水とお茶、ファット・フューエルのコーヒー、植物性プロテインのシェイク。出張のときも、これらは必ずスーツケースに入れて持っていきます。
こう書くと「ストイックですね」と言われたりするのですが、私としては逆で、ラクをするためにこうしています。
今日は「選択肢オーバーロード」のお話です。「決めないことを決める」という、ちょっと不思議な考え方についてご紹介します。
選択肢が多いほど、人は選べなくなる
選択肢オーバーロード(Choice Overload)とは、選択肢が多すぎると、人はかえって選べなくなってしまう現象のことです。
「多いほうが親切」とか「選べる自由があるほうがいい」と、私たちはつい考えがちです。ところが行動経済学の研究では、ある一定のラインを超えると人は比較することに疲れて、結局は「選ばない」という結論を下してしまうことがわかっています。
有名な実験のひとつに、ペンの購入率を選択肢の数を変えて調べたものがあります。選択肢が2本だと購入率は約40%。10本まで増やすと約90%まで跳ね上がり、「選べる楽しさ」がぐんと効きます。ところが、そこからさらに増やしていくと購入率は逆に下がりはじめ、20本になると2本のときよりも低くなりました。
つまり、選択肢が多すぎると、人は「自分にとって何がベストか」を見極められなくなり、判断を放棄してしまうのです。
「相手」の話だけではない
この話は、お客様や上司にどう選択肢を提示するかという「相手」向けの設計の話として語られることが多いように思います。3案ではなく、2案に絞る。プランの数を整理する。それは、たしかに大事な視点です。
でも今日は、視点を変えて、「あなた自身が」選択しやすくなる話をしたいと思います。
ビジネスパーソンは日々、無数の選択にさらされています。どの案件を優先するか。どの資料にどれだけ時間をかけるか。誰に任せるか。メールの返信をすぐに返すか、後回しにするか。
従来の経済学の前提では、これらをすべて比較し、熟考したかえで決めるのが理想とされます。しかし、情報も選択肢もあふれている現代のビジネス環境で、それは現実的ではありません。考えすぎて結局どれも決められない、という方がむしろ問題です。
そもそも選ばないようにする
では、自分自身が選択肢オーバーロードから抜け出すには、どうすればいいのでしょうか。一つの有効な方法が、「そもそも選ばないようにする」という考え方です。
冒頭でお話しした朝食の話が、まさにこれにあたります。
私の朝は、まず水とお茶から始まり、カリフォルニアでよく飲まれているファット・フューエルという、1杯およそ200キロカロリーのコーヒーを飲みます。その後に、植物性プロテインをベースにした、ビタミン・ミネラルを加えた栄養シェイクを摂る。これが10年以上ほぼ固定のメニューです。
私は移動や出張が多い生活なので、これらは必ずスーツケースに入れて持っていきます。そうすると、どこに泊まっていても一貫した食生活で1日を始められます。さらに、「朝ごはんはどうしようか?」「コーヒーはどこで買おうか?」と考えなくて済む分、脳のリソースと時間を、もっと大事な意思決定に回せるのです。
もう一つ、私が「決めないこと」にしているのが服装です。リモートのミーティングで着る服は、基本的に黒。あるいは気に兣った服を、ネットで色違いやパターン違いでまとめて買っています。
こうしておくと、買い物の意思決定の負荷も、「今日は何を着ようか?」という朝の悩みも、両方が大きく下がります。
「決めないこと」を、あらかじめ決めておく
朝食や服装は、そもそも結果に大きな差が出ない選択です。
それでも、「今日は何を食べよう?」「今日は何を着よう?」と毎朝考えていると、その分だけ脳のリソースは消費されています。判断の数だけ、エネルギーは消費されていく。
毎朝の朝食。会議で使う定例資料のフォーマット。メールの返信パターン…。こうした「考えなくてもいいこと」をあらかじめ決めておく。そうすることで、本当に重要な判断のときに、システム2を使って丁寧に考える余裕が生まれます。
大事なのは、ルーティンで生活を埋めつくすことではありません。「ここは決めなくていい」と自分で線を引いておく。それを意識するようになってから、判断にかかる負担が惃像以上に減ったというのが、私自身の実感です。
みなさんの日常にも、「ここは決めなくていい」と切り分けられそうな場面はありませんか?気がつかないうちに、毎回ゼロから考えてしまっているものがあるかもしれません。
FAQ
よくある質問
Q選択肢オーバーロードとは何ですか?
選択肢が多すぎると、人はかえって選べなくなってしまう現象です。「多いほうが親切」と考えがちですが、ある一定のラインを超えると人は比較に疲れて、「選ばない」という結論を下してしまうことが研究でわかっています。
Q選択肢が増えると購入率はどう変わりますか?
ペンの実験では、選択肢が2本のとき購入率は約40%、10本まで増やすと約90%まで跳ね上がりました。ところがそこからさらに増やすと購入率は下がりはじめ、20本になると2本のときよりも低くなりました。選択肢の多さは、ある点を超えると逆効果になります。
Q「決めないことを決める」とはどういう意味ですか?
朝食や服装のように結果に大きな差が出ない選択を、あらかじめ固定してしまう考え方です。「ここは決めなくていい」と自分で線を引いておくと、脳のリソースと時間を本当に重要な判断に回せます。判断の数だけエネルギーは消費されるため、その負担を減らす方法です。






