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最強の行動経済学 つい「そのまま」にしてしまう心理

つい「そのまま」にしてしまう心理

スマートフォンの初期設定を見直すビジネスパーソン(デフォルト効果・マーケティングのイメージ)

What you’ll learn

  • つい「そのまま」にしてしまう心理の正体
  • 初期設定が選ばれやすいデフォルト効果
  • 臓器提供の同意率が国で大きく違う理由
  • 繰り返しで信じてしまう真理の錯誤効果
  • 消費者と発信者、両方の視点での向き合い方

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計19万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学コンサルタントの相良奈美香です。

スマホのサブスク、気づいたら自動更新されていた。メルマガ登録のとき、チェックボックスが最初から入っていた。新しいアプリを入れたら、位置情報の共有がオンになっていた。

あなたはこのような経験、ありませんか?

今日は「マーケティングと行動経済学」をテーマに、私たちの判断が気づかないうちに方向づけられている2つの仕組みをご紹介します。

最初から決まっている選択肢の力

行動経済学に「デフォルト効果」という概念があります。初期設定がそのまま選ばれやすい、という現象です。これを鮮やかに示したのが、コロンビア大学のエリック・ジョンソン教授による臓器提供の調査です。

ヨーロッパ各国の臓器提供の同意率を比較すると、驚くほどの差が出ます。オーストリア99.9%、ベルギー99.9%、フランス99.9%。ほぼ全員が「提供する」を選んでいます。一方デンマークは4.2%、イギリスは17.1%。ドイツに至っては12.0%です。同じヨーロッパの国々なのに、なぜここまで違うのでしょうか?

ヨーロッパの中での比較ですから、文化や宗教の違いでは説明がつきません。違いはたった一つ。手続きの「初期設定」です。

同意率が高い国では「ノーとチェックを入れない限り、自動的に臓器提供者になる」という、いわゆる「オプトアウト方式」。同意率が低い国では「イエスとチェックを入れないと提供者にならない」という、「オプトイン方式」を採用しています。

臓器提供は、命に関わる重い判断です。簡単には決められない。だからこそ、多くの人がデフォルトのままにしてしまう、というわけです。

アメリカでもこのデフォルトの力が注目されたことがあります。多くのカレンダーアプリでは、会議の時間が60分に設定されています。特に意識せず予約すると、自動的に60分の枠ができてしまう。そこでデフォルトを30分や45分に変えた会社では、会議時間が明らかに短くなったそうです。

サブスクの自動更新も、根っこは同じです。「わざわざ変えなくてもいいか」と思ったとき、もう初期設定に乗っかっているんですね。

繰り返されると、なぜか信じてしまう

もう一つ、マーケティングと深く関わる概念が「真理の錯誤効果」です。

何度も見たり聞いたりした情報を、正しいと感じやすくなる認知のクセです。情報の中身が正確かどうかとは関係なく、「聞き慣れている」という感覚が信頼感を生みます。

たとえばSNS広告で「1回使っただけで歧が真っ白になる」と流れてきたとします。最初は「さすがに嘘でしょ」と思う。でも数日後も同じ広告を見て、翌週もまた目に入る。すると「まあ、試してみてもいいかも」という気持ちが少しずつ芽生えてきます。

ビジネスの現場でも同じことが起きます。上司が会議やメールで同じ主張を繰り返していると、明確なデータがなくても「何度も聞くし、正しいのだろう」と感じ始める。これも真理の錯誤効果です。

マーケティングでは、同じブランドメッセージを複数のチャネルで一貫して繰り返すことで「聞き慣れた=信頼できる」という心理が強まるのです。

消費者として、ビジネスパーソンとして

この2つの概念を知ると、見える景色が変わります。

消費者としては、自分が「なんとなく選んでいる」ものの中に、誰かが設計した初期設定がないか、意識してみる価値があります。「繰り返し聞いたから正しい」と感じていないか、立ち止まってみるのも大事です。

ビジネスの視点では、お客様の最初の体験にどんなデフォルトが設定されているかを見直すきっかけになるでしょう。ブランドメッセージの一貫性と接触回数が、信頼の土台をつくっているという点も見逃せません。

大切なのは、こうした心理の仕組みを知った上で、消費者としても発信者としても意識的でいることかもしれませんね。

FAQ

よくある質問

Qデフォルト効果とは何ですか?

初期設定がそのまま選ばれやすい、という現象です。臓器提供の同意率を比べると、自動的に提供者になるオプトアウト方式の国は99%を超え、自分でチェックを入れるオプトイン方式の国は大きく下がります。重い判断ほど、人はデフォルトのままにしやすいのです。

Q真理の錯誤効果とはどんな心理ですか?

何度も見たり聞いたりした情報を、正しいと感じやすくなる認知のクセです。中身が正確かどうかとは関係なく、「聞き慣れている」という感覚が信頼感を生みます。同じ広告や同じ主張を繰り返し目にすると、少しずつ受け入れてしまうのはこのためです。

Q行動経済学はマーケティングにどう関わりますか?

お客様の最初の体験にどんなデフォルトが設定されているかは、選択に大きく影響します。また、同じブランドメッセージを複数のチャネルで一貫して繰り返すことで、信頼の土台がつくられます。仕組みを知った上で、消費者としても発信者としても意識的でいることが大切です。

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