What you’ll learn
- 「赤身75%」と「脂質25%」で選択が変わる理由
- フレーミング効果を検証した牛ひき肉の実験
- 情報の順番で効果が変わる3パターンの違い
- 架空の病気の実験で起きた選択の大逆転
- プロスペクト理論が示す得と損の非対称
メルマガ読者のみなさん、こんにちは。
行動経済学コンサルタントの相良奈美香です。
スーパーのお肉売り場で、ひき肉のパッケージにこう書いてあったとします。
片方には「赤身75%」、もう片方には「脂質25%」。
よく考えると、どちらも中身は全く同じ商品なんですね。でも、多くの人は「赤身75%」の方に手を伸ばしてしまう傾向があります。
今日はこの不思議な現象の裏側にある、行動経済学の有名な概念「フレーミング効果」のお話です。
牛ひき肉の「赤身75%」が選ばれる理由
実はこれ、行動経済学でしっかり検証された実験があります。
被験者にA「赤身75%」とB「脂質25%」の2つの表示を見せて、4つのポイントで評価してもらう、というものです。「おいしそうか」「脂っこくないか」「品質が高そうか」「脂肪が少なそうか」の4点ですね。
結果、Aを見た被験者はこう評価しました。「おいしそうだ。脂っこくないだろうし、赤身が多くて、品質が良さそう。脂肪も少ないだろう」と。Bよりも明らかに高く評価されたんです。
面白いのは、この実験にはさらに3つのパターンがあった点です。パターン1は「見ただけで試食しない」という条件。パターン2は「見てから試食する」という条件です。そしてパターン3は「試食してから見る」という流れになり
結果はこうでした。パターン1ではフレーミング効果が最も強く出ます。パターン2ではその効果が小さくなります。そしてパターン3、つまり先に味を体験してしまうと、AとBの評価にはほとんど差が出なくなったのです。
情報の順番ひとつで、私たちの判断はこんなにも揺らぐんですね。
架空の病気の実験で起きた、選択の大逆転
もう一つ、有名な実験をご紹介します。カーネマンとトヴェルスキーが発表した、架空の病気の実験です。
学生たちにこう伝えます。「ある病気が流行している。その病気が原因で600人が死亡すると予想される」。そのうえで「あなたが責任ある立場にいたら、対策Aと対策Bのどちらを取りますか?」と尋ねます。
ここで2つのグループに分けて、表現だけを変えました。内容は全く同じです。
【ポジティブな表現】
対策A「確実に200人が助かり、400人は助からない」
対策B「3分の1の確率で600人全員が助かり、3分の2の確率で誰も助からない」
【ネガティブな表現】
対策A「確実に400人が死亡し、200人が死亡しない」
対策B「3分の1の確率で誰も死亡せず、3分の2の確率で600人全員が死亡する」
結果は、見事に分かれました。ポジティブな表現を見たグループでは、72%が確実性のある対策Aを選んでいます。一方、ネガティブな表現を見たグループでは、78%がリスクのある対策Bを選んだんですね。
プロスペクト理論によれば、人は「得るもの」を強調されると確実性を求めます。逆に「損失」が前面に出ると、今度はリスクを取ろうとするのです。表し方次第で、選択がここまで逆転してしまうんですね。
判断を決めているのは「見え方」
この2つの実験が教えてくれるのは、人間の判断が思っているほど客観的ではないということです。
私たちは「中身を見て決めている」と思い込んでいますが、実際にはその前の「どう提示されたか」に大きく影響されているんですね。肉のラベル・病気の対策・ビジネスの提案書・日常の会話。みな同じことなのです。
ここで面白いのは、肉の実験のパターン3が示した事実です。体験や事実に直接触れると、フレーミング効果は弱まっていきます。つまり私たちは、情報が少ないときほど「言葉の枠」に引きずられやすいのです。
日々のビジネスの現場で、お客様や同僚や自分自身が、どんなフレームで物事を見ているか。どんな言葉で提示されているか、ふと意識してみると、判断の出発点が少し変わってくるかもしれません。
FAQ
よくある質問
Qフレーミング効果とは何ですか?
同じ内容でも、どう提示されるかによって判断が変わる現象です。牛ひき肉の実験では、中身が同じでも「赤身75%」のほうが「脂質25%」より高く評価されました。私たちの判断は、提示のされ方に大きく影響されています。
Qなぜ「赤身75%」のほうが選ばれやすいのですか?
「赤身が多い」というポジティブな枠で提示されると、おいしそう・品質が良さそうと評価されやすくなるためです。実験では、味を試食する前ほどこの効果が強く出て、先に味を体験すると差がほとんどなくなりました。
Q表現を変えるだけで選択が逆転するのはなぜですか?
プロスペクト理論によれば、人は「得るもの」を強調されると確実性を求め、「損失」が前面に出るとリスクを取ろうとします。架空の病気の実験では、内容が同じでもポジティブな表現で72%が確実な対策を、ネガティブな表現で78%がリスクのある対策を選びました。






