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最強の行動経済学 部下の意見を先に聞く理由

部下の意見を先に聞く理由

部下の意見に耳を傾ける上司、ポジティブアフェクトが生まれる職場

What you’ll learn

  • ポジティブアフェクトとは、喜びや感謝、安心といった「淡いポジティブな感情」のことで、強い喜怒哀楽とは違って本人にも自覚されにくいのが特徴であること
  • 朝のコーヒーが思いのほかおいしくて少し気分がいい、同僚から短い感謝のメッセージが届いて何となく嬉しい、といった言葉にしないくらいの小さな感情がアフェクトであること
  • 1日の判断やコミュニケーションの大半は淡い感情が背景に流れた状態で行われており、その積み重ねが仕事のパフォーマンスを思った以上に左右すること
  • ノースカロライナ大学のバーバラ・フレデリクソンが発表し2万件以上引用されている「拡張-形成理論」――ポジティブな感情は視野や思考の幅を広げ、打たれ強さ(レジリエンス)を育てること
  • 淡い感情は人から人へ伝染する性質があり、「聞いてもらえた」「任されている」と感じたときに生まれるポジティブアフェクトが、主体性や立ち直りの早さにつながること

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計20万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学者の相良奈美香です。

私は自分のチームで、何かを決めるとき、できるだけ部下の意見を先に聞くようにしています。なぜなら、私が先に言ってしまうと、どうしてもそれに引っ張られてしまうからです。「私が先に言うと先入観を与えちゃうから、まずあなたの率直な意見を聞かせてほしい」。そう伝えて、先に部下から意見を出してもらう。そして、出してもらった意見は、できる限り取り入れます。どちらでも構わないような場面なら、迷わず部下の案を選びます。

こういうやりとりは、ただの「気遣い」に見えるかもしれません。でも私がここまで意識しているのには、行動経済学のれっきとした理由があります。

今日は「ポジティブアフェクト」のお話です。

自覚しにくい、淡い感情

「ポジティブアフェクト」とは、喜びや感謝、安心といった「淡いポジティブな感情」のことです。

強い感情の、いわゆる「喜怒哀楽」とは違って、アフェクトは自覚されにくいのが特徴です。朝のコーヒーが思いのほかおいしくて少し気分がいい。同僚から短い感謝のメッセージが届いて何となく嬉しい。アフェクトとは、本人がはっきり言葉にしないくらいの、小さな感情です。

しかし、自覚しにくいからといって、軽く見てはいけません。1日の判断やコミュニケーションの大半は、実はこうした淡い感情が背景に流れている状態で行われています。その積み重ねは、仕事のパフォーマンスを思った以上に左右します。

淡い感情が、仕事の質を変える

なぜ職場でこの淡い感情のアフェクトに注目するのか。鍵になるのが「拡張-形成理論」という考え方です。

ノースカロライナ大学のバーバラ・フレデリクソンが発表し、現在までに2万件以上の引用がされている理論です。エッセンスはシンプルで、ポジティブな感情は視野や思考の幅を広げ、打たれ強さ、つまりレジリエンスを育ててくれます。

反対に、ネガティブな感情のもとでは、人は目の前のリスクや不安に注意が集中しがちです。一方のポジティブアフェクトのもとでは、視野が広がって、一見関係のなさそうな情報同士を結びつけ、新しい解を生み出しやすくなります。失敗や厳しいフィードバックを受けた後の立ち直りも早い。営業の不調期やプロジェクトの中だるみ期に、この差はチーム全体の動きに表れてきます。

また、もうひとつ知っておきたいのが、淡い感情は人から人へ伝染するという性質です。誰かのポジティブな感情は、まわりにも自然と移っていきます。職場の空気というのは、こうして作られているものなのです。

「任されている」が生まれるとき

ここで冒頭の話に戻ります。

部下の意見を先に聞いて、できる限り採用する。私がここまでするのは、そこにポジティブアフェクトが生まれるからです。「聞いてもらえた」とか「任されている」と感じたとき、その人の中に淡いポジティブな感情が動きます。

自分で決められる範囲が広がると、その仕事は自分のものになります。「やらされている」感覚から「任されている」感覚に変わる。すると視野が広がり、次の場面でもまた積極的に意見を出してくれるようになります。

よく「部下に主体性がない」という相談を受けます。けれど主体性は、機会をあげないと育たないものです。淡い感情が動き、その人の能力がのびのびと出てくる。その入り口を、まわりが用意できるかどうかなのです。

私が部下の意見を先に聞くのは、チームが一番力を出せる状態をつくるためです。淡い感情を侮らない。これが、行動経済学を研究してきた私が、自分のチームで一番大事にしている実感の一つです。

みなさんの職場にも、ほんの少しのやりとりで誰かの「任されてもらっている」が生まれる場面があるのではないでしょうか。

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FAQ

よくある質問

Qポジティブアフェクトとは何ですか?

喜びや感謝、安心といった「淡いポジティブな感情」のことです。怒りや大きな喜びのような強い喜怒哀楽とは違い、本人がはっきり言葉にしないくらいの小さな感情で、自覚されにくいのが特徴です。たとえば朝のコーヒーが思いのほかおいしくて少し気分がいい、同僚から短い感謝のメッセージが届いて何となく嬉しい、といった感覚がアフェクトにあたります。

Qなぜ職場でポジティブアフェクトが大切なのですか?

1日の判断やコミュニケーションの大半は、こうした淡い感情が背景に流れた状態で行われているからです。ノースカロライナ大学のバーバラ・フレデリクソンが発表した「拡張-形成理論」によると、ポジティブな感情は視野や思考の幅を広げ、打たれ強さ(レジリエンス)を育てます。視野が広がると、一見関係のなさそうな情報同士を結びつけて新しい解を生み出しやすくなり、厳しいフィードバックを受けた後の立ち直りも早くなります。

Q部下のポジティブアフェクトを引き出すにはどうすればいいですか?

部下の意見を先に聞き、できる限り採用することがひとつの手がかりになります。「聞いてもらえた」「任されている」と感じたとき、その人の中に淡いポジティブな感情が動きます。自分で決められる範囲が広がると、その仕事は自分のものになり、「やらされている」感覚から「任されている」感覚へと変わります。淡い感情は人から人へ伝染するため、こうしたやりとりは職場全体の空気づくりにもつながります。

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