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最強の行動経済学 たった一言の違いで人生設計が7年ズレる理由

たった一言の違いで人生設計が7年ズレる理由

確実かリスクか、プロスペクト理論の選択に迷うビジネスパーソン




What you’ll learn

  • プロスペクト理論――利益が得られる場面ではリスクを避け、損失が出る場面ではリスクを取る。同じ人が場面によって真逆の選択をする法則であること
  • 2つの質問例――「確実に90万円もらえる」か「100万円もらえるが確率90%」では多くが確実な方を選び、「確実に90万円失う」か「100万円失う確率90%だが10%は何も失わない」では多くが後者を選ぶこと(期待値は同じなのに選択が逆転する)
  • 「損失回避性」――100万円を得た喜びより失ったショックの方が大きく、その差は2倍前後とされること。株の「塩漬け」や利益確定を急ぐ行動の背景にあること
  • デューク大学のポスドク時代にコロンビア大学・UCLAと行った共同研究――「○歳まで生きる確率は?」と聞かれたグループは「亡くなる確率は?」と聞かれたグループより、自分の寿命を約7〜9年長く見積もったこと
  • プロスペクト理論が示すのは特定の人ではなく人間の脳に本来備わった認知の傾向であること、そして「今の判断は何に影響されているか」と立ち止まれるかで意思決定の質が変わること

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計20万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学コンサルタントの相良奈美香です。

突然ですが、ひとつ質問です。

「確実に90万円がもらえる」のと、「100万円がもらえるけど、確率は90%」。どちらを選びますか?

多くの方は「確実に90万円」の方を選びます。期待値はどちらも同じ90万円なのにも関わらず…。

では、こちらの質問はどうでしょうか?

「確実に90万円を失う」のと、「100万円を失う確率が90%だけど、10%の確率で何も失わない」。どちらを選びますか?

不思議なことに、今度は多くの人が後者を選ぶんですよね。確実に失うくらいなら、10%の可能性に賭けたくなる…。

利益が得られる場面ではリスクを避け、損失が出る場面ではリスクを取る。同じ人が、場面によって真逆の選択をする。この法則を明らかにしたのが、行動経済学の基礎理論「プロスペクト理論」です。今日はこの話をしたいと思います。

「失う痛み」は「得る喜び」の2倍

プロスペクト理論の中で一番有名なのが「損失回避性」です。

100万円をもらったときの喜びと、100万円を失ったときのショック。金額は同じなのに、失ったときの方がはるかに大きく感じる。研究によると、その差は2倍前後とされています。

投資をされている方には、身に覚えがあるかもしれません。含み損を抱えた株を「損失を確定させたくない」と持ち続けてしまう、いわゆる「塩漬け」。逆に、少しでも利益が出ると「失いたくない」と早々に売ってしまう。

頭ではわかっていても、損失を確定させるという行為そのものが、心理的にとても大きな苦痛なんですよね。

あなたの「あと何年生きるか」は、聞かれ方で変わっている

ここからが、今日一番お伝えしたい話です。

老後の資金計画を考えるとき、「自分があと何年生きるか」は、すべての前提になりますよね。毎月いくら使って良いのか、いくらの貯蓄が必要なのか。こうした判断はすべて寿命の見積もりの上に成り立っています。

でも、もしその見積もり自体が、聞かれ方一つで大きく揺れてしまったしたらどうでしょうか?

私がデューク大学でポスドクの研究員をしていた時期に、コロンビア大学やUCLAとの共同研究で、まさにこれを検証しました。

やったことはシンプルです。被験者に2通りの聞き方で質問しました。「あなたが○歳まで生きる確率は?」と、「あなたが○歳までに亡くなる確率は?」。聞いていることは同じですよね。

ところが、「生きる確率」と聞かれたグループの方が、自分の寿命を約7〜9年も長く見積もっていたんです。

「生きる確率」と聞かれると、健康習慣や医療の進歩など「生きられる理由」に意識が向く。「亡くなる確率」と聞かれると、病気や事故など「亡くなる理由」に目が向く。質問の仕方ひとつで、人生設計の前提が7年も変わってしまうのです。

「気づけるかどうか」が分かれ目

プロスペクト理論が示す心理は、特定の人に限った話ではありません。人間の脳に本来備わっている認知の傾向です。

知ったからといって、すぐにこうしたことから自由になれるわけではありません。でも、「今の自分の判断は、何に影響されているんだろう」と立ち止まれるかどうかで、意思決定の質はかなり変わってきます。

次に大きな判断をするとき、例えば投資、転職、事業の撤退などの判断をするとき、「損失を恐れているだけかも」と一瞬でも思えたら、それだけでも、この「認知のクセ」に振り回されにくくなるはずです。

FAQ

よくある質問

Qプロスペクト理論とは何ですか?

利益が得られる場面ではリスクを避け、損失が出る場面ではリスクを取る、というように、同じ人が場面によって真逆の選択をすることを明らかにした行動経済学の基礎理論です。たとえば「確実に90万円もらえる」と「100万円を90%の確率でもらえる」では多くの人が確実な方を選びますが、損失の場面では逆にリスクを取る方を選びます。

Q損失回避性とは何ですか?

同じ金額でも、得たときの喜びより失ったときのショックの方がはるかに大きく感じる心理のことです。研究によると、その差は2倍前後とされています。投資で含み損を抱えた株を「損失を確定させたくない」と持ち続ける「塩漬け」や、少し利益が出ると早々に売ってしまう行動は、この損失回避性によるものです。

Q質問の聞かれ方で、人の判断はどれくらい変わるのですか?

デューク大学でのポスドク時代に行った共同研究では、「あなたが○歳まで生きる確率は?」と聞かれたグループの方が、「○歳までに亡くなる確率は?」と聞かれたグループより、自分の寿命を約7〜9年も長く見積もりました。「生きる確率」と聞かれると生きられる理由に、「亡くなる確率」と聞かれると亡くなる理由に意識が向くためで、聞かれ方ひとつで人生設計の前提が変わってしまいます。

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