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最強の行動経済学 店で素敵に見えた小物が、家では普通?

店で素敵に見えた小物が、家では普通?

雑貨店の棚に並ぶマグカップの一つに手を伸ばす場面

What you’ll learn

  • プライミング効果の意味と、直前に触れた刺激に判断が引っ張られること
  • アリゾナ州立大学のナオミ・マンデルの自動車ECサイト実験で、背景が緑だと価格重視モデルを66%、赤だと安全性重視モデルを50%が選んだ結果
  • 店内のBGMを変えたワインショップの実験で、フランスを思わせる音楽の週に83%がフランスワインを購入した結果
  • 音楽に影響されたと答えた人はわずか15%で、ほとんどが気づいていなかったという事実
  • 商品を取り巻く雰囲気と商品がかみ合うと選ばれやすくなり、ちぐはぐだと効果が生まれにくくなること

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計20万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学者の相良奈美香です。

店で見たときは素敵だと思って買ったのに、家に置いてみると、なんだか普通に見える。お店のディスプレイで輝いていた食器が、自宅の棚ではただのお皿になっている。こんな経験、ありませんか?

今日は「プライミング効果」のお話です。

私たちの判断は、気づかないところで周りの環境に動かされています。それがどれくらいの力なのか、これから紹介する実験で見ていきます。

背景の色だけで、選ぶ車が変わった

まずは、ある興味深い調査を紹介します。アリゾナ州立大学のナオミ・マンデルが行った、自動車のECサイトを使った実験です。

サイトを2種類用意して、どちらでも「安全性を重視したモデル」と「価格を重視したモデル」の同じ2台を販売します。レイアウトも、商品の説明文も、すべて同じ。違うのは背景の色だけ。一方は緑、もう一方は赤です。

すると、大きな差が出ました。背景が緑のサイトでは、「価格重視のモデル」を選んだ人が66%。ところが背景を赤に変えると、「安全性重視のモデル」を選ぶ人が50%にまで増えたのです。

なぜこんなことが起きるのでしょうか。アメリカでは、緑は「お金」を連想させる色です。紙幣が緑色だからです。緑を見ていると、無意識のうちに「価格」へ意識が向く。一方の赤は、炎や爆発、つまり危険を思わせます。そこから「事故」が連想され、「安全性を重視しよう」という気持ちが働く。これは色と意味の結びつきがアメリカ特有のものなので、日本だとあまりピンとこないかもしれません。

ただ、ここでポイントなのは、「私たちは自分でも気づかないうちに、周りの刺激に判断を引っ張られている」ということです。色の意味が文化で変わっても、引っ張られること自体は変わりません。

流れていた音楽で、買うワインが決まる

もうひとつ、面白い実験があります。あるワインショップで、2週間にわたって店内のBGMを変えながら、売れるワインの傾向を調べたものです。

お店にはフランスワインとドイツワインが並んでいます。価格帯も、甘さや渋みの条件もそろえてあります。目立つ場所が有利にならないよう、週ごとに陳列の位置も入れ替えました。違うのは、流れている音楽だけです。

フランスを思わせる音楽が流れた週は、来店客の83%がフランスワインを購入しました。ところがドイツを思わせる音楽に変えると、今度は65%の人がドイツワインを選び、フランスワインは35%にまで減ったのです。

さらに、買い物を終えたお客さんに、「実は週ごとに音楽を変えていたんですよ」と明かして、アンケートを取りました。音楽に影響されてワインを選んだと思いますか、と。すると、「影響された」と答えた人は、わずか15%。

つまりほとんどの人は、音楽に背中を押されていたことに、まったく気づいていなかったのです。

雰囲気との一致が、選択を後押しする

ここまでの2つの実験には、共通点があります。私たちは商品を、その「機能」だけで選んでいるわけではない、ということです。

商品を取り巻く「なんとなくの雰囲気」と、その商品がうまくマッチしたとき、人はそれを選びやすくなる。赤い背景が「安全性の車」の後押しになったのは、赤=危険=だから安全が大事、という連想とかみ合ったからです。フランスの音楽がフランスワインを伸ばしたのも、産地のイメージと一致したからでした。

逆に言えば、雰囲気と商品がちぐはぐだと、効果は生まれにくくなります。赤い背景で「とにかく安さ」を訴えても、危険の連想と価格の安さはうまく結びつきません。

日常的にどんな言葉に触れているか。それが、知らない間に行動の方向を決めている。冒頭の「家に持ち帰ると普通に見える小物」も同じです。お店の照明や音楽、空間の雰囲気が、商品を素敵に見せていたのかもしれません。

環境は、私たちが思っている以上にはっきりと選択を動かしています。そして、動かされている本人はほとんど気づきません。

だからこそ、つくり手は顧客の「無意識」の環境設定を戦略的にしなければいけません。もちろん商品自体をよくするのはもちろん大切です。ただ、それをどんな雰囲気の中に置くかも、同じくらい、もしかしてそれ以上に効いてきます。

FAQ

よくある質問

Qプライミング効果とは何ですか?

直前に触れた色や音楽などの刺激が、自分では気づかないうちに、その後の判断や選択を左右する現象です。記事では、自動車ECサイトの背景色を変えた調査と、ワインショップのBGMを変えた実験を取り上げています。

Q背景の色を変えるだけで、本当に選ぶ車が変わるのですか?

アリゾナ州立大学のナオミ・マンデルが行った、自動車のECサイトの実験があります。安全性重視と価格重視の2台を並べ、レイアウトも説明文もそろえて、背景色だけを緑と赤に変えました。緑のサイトでは価格重視のモデルを選んだ人が66%でした。赤に変えると、安全性重視のモデルを選ぶ人が50%まで増えています。アメリカでは、緑はお金を連想させる色です。紙幣が緑色だからです。赤は炎や爆発を思わせ、そこから事故が連想されます。

Qプライミング効果は商品づくりにどう活かせますか?

商品自体をよくすることに加えて、それをどんな雰囲気の中に置くかが、選ばれやすさを左右します。赤い背景が安全性の車の後押しになったように、環境の連想と商品がかみ合うと効果が生まれます。赤い背景で安さを訴えても、危険の連想と価格の安さはうまく結びつきません。

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