What you’ll learn
- 快楽適応の意味と、人が元の幸福度に戻っていく仕組み
- 人間の脳が新しい刺激に強く反応し、その刺激が続くと反応を弱めていくこと
- 「アフェクト」と呼ばれる淡い感情と、日々の小さな良い気分にも快楽適応が起きること
- 小さな良い気分に「気づく」ための、食事や散歩での具体的な向き合い方
- 快楽適応は良くない状況にも起きるため、淡い良い気分への感度が大切になること
メルマガ読者のみなさん、こんにちは。
行動経済学者の相良奈美香です。
新しいスマホを買ったとき、欲しかった車が納車されたとき、仕事で昇進が決まったとき。手に入れた直後はあれほど嬉しかったのに、しばらくすると、それが「普通」になっている。そんな経験はないでしょうか。
今日は、この「良い気分が薄れていく」現象の正体、「快楽適応」のお話です。
人はベースラインに戻る
「快楽適応」とは、人は何が起こっても、元の幸福度に戻っていくという考え方です。
新車を買ったとき、昇進したとき、新しいパートナーができたとき。最初はすごくハッピーだったのに、いつの間にかその嬉しさを感じなくなっている。これがまさに快楽適応です。
私たちは、「感謝が足りない」とか「そういう性格だ」と思ってしまいがちかもしれません。
人間の脳は、新しい刺激や変化に強く反応します。そしてその刺激が続くと、だんだん反応を弱めていく。どんなものにも慣れてしまうように、もともとそういう風にできているのです。だから、嬉しさが薄れるのは、あなたの性格だからではありません。私たちはそもそも「慣れやすい」生き物なのです。
大きな幸せだけの話ではない
快楽適応というと、昇進や新車のような大きな出来事を思い浮かべるかもしれません。でも、この仕組みはもっと身近な、日々の小さな良い気分のところでも働いています。
ここで「アフェクト」という考え方が出てきます。アフェクトとは、喜怒哀楽ほどはっきりしない、ふんわりとした淡い感情のことです。「この一口、おいしいな」「今日はなんだか気分がいいな」。本人もあまり意識しないくらいの、小さな良い気分です。私たちの一日は、こうした淡い感情にずっと彩られています。
快楽適応は、この淡いポジティブなアフェクトにも起きます。たとえば、毎朝のスタバのコーヒー。最初のころは、お気に入りの一杯を飲むと、ちょっと幸せな気分になっていたとします。でも毎日のように飲んでいるうちに、いつの間にかそれが「いつもの一杯」になっていく。これも、慣れによる快楽適応です。
大きな幸福も、日々の小さな良い気分も、同じ仕組みで薄れていきます。私たちは、良いことにもどんどん慣れてしまうのです。
まず「気づく」ことから
では、薄れていくのを前にして、私たちにできることは何でしょうか。
入り口は、とてもシンプルです。日々の小さな良い気分に「気づく」こと。これがすべての出発点になります。慣れていくのが脳の仕様なら、せめて良い気分が起きている間に、自分でそれをちゃんと受け取ってあげる。そのように意識を向けるのです。
例えば食事中、スマホを見ながら食べていると、せっかくのおいしさはほとんど意識に残りません。スマホを置いて、目の前の一口を味わってみる。すると、「あ、おいしいな」というポジティブな気分を、自分でちゃんと感じ取れます。散歩のときも同じで、スマホを持たずに目の前の景色を眺めてみると、それまで素通りしていた気分の良さに気づけたりします。
今日のランチやおやつのひと口を、少しだけ意識して味わってみてください。いつもなら流れていってしまう小さな良い気分に、気づけるかもしれません。
快楽適応は、悪いことにも起きます。良くない状況にも人は慣れてしまい、慣れてしまうと「変えよう」という気持ちが薄れていく。だからこそ、淡い良い気分に気づける感度は、思っている以上に大切なのです。
アフェクトについてもっと学びたい方へ
もっとアフェクトについて学んでみたいという方に、アフェクト入門講座をご用意しています。
FAQ
よくある質問
Q快楽適応とは何ですか?
人は何が起こっても、元の幸福度に戻っていくという考え方です。新車を買ったとき、昇進したとき、新しいパートナーができたとき。最初はすごくハッピーだったのに、いつの間にかその嬉しさを感じなくなります。
Q嬉しさが薄れてしまうのは、そういう性格だからでしょうか?
性格の問題ではありません。人間の脳は新しい刺激や変化に強く反応し、その刺激が続くと、だんだん反応を弱めていきます。私たちはそもそも「慣れやすい」生き物なのです。
Q快楽適応に対して、私たちにできることはありますか?
入り口は、日々の小さな良い気分に「気づく」ことです。食事中にスマホを置いて目の前の一口を味わってみると、「あ、おいしいな」というポジティブな気分を自分で受け取れます。散歩のときも、スマホを持たずに景色を眺めてみると、素通りしていた気分の良さに気づけたりします。



