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最強の行動経済学 最初の人と最後の人

最初の人と最後の人

面接の順番を待つ複数の候補者が廊下に並んで座る様子。登場順が評価を左右する系列位置効果のイメージ

What you’ll learn

  • 系列位置効果の意味と、最初と最後の情報が記憶に残りやすいこと
  • 初頭効果と新近効果の違い、そして真ん中が印象に残りにくい理由
  • 中身がまったく同じ3種類のワインで、55%が「最初の一杯」を選んだ実験
  • 面接やオーディション、プレゼンで登場の順番が結果を左右すること
  • 翻訳者の採用で初頭効果に気づき、採点する仕組みを足した実体験

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計20万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学者の相良奈美香です。

面接やオーディションで、順番を選べるとしたら何番目を選びますか?

あるいは、いくつか候補を見比べたとき、最初に見たものや最後に見たものばかり印象に残っている。真ん中のことは、あまり覚えていない。こういう経験、心当たりはないでしょうか?

私たちは、並んだ情報や候補を平等に見て判断しているつもりでいます。実際には、その順番によって、何が記憶に残るかがかなり変わってきます。

今日はこの「系列位置効果」のお話です。

最初と最後が、頭に残る

系列位置効果とは、いくつかの情報を順番に受け取るとき、その順番によって記憶への残り方が変わる現象です。中でも印象に強く残るのが、最初に来た情報と、最後に来た情報です。

最初の情報が強く印象づけられることを「初頭効果」、最後の情報が判断に効いてくることを「新近効果」と呼びます。逆に言えば、真ん中に挟まれた情報は印象に残りにくい。私たちは合理的に考えれば、すべての情報を同じ重みで判断に使えるはずです。ところが実際には、記憶に残ったものを手がかりに選んでしまいます。

同じワインなのに、最初の一杯が一番おいしい

これを示す、おもしろい実験があります。

被験者は「地元のワインについての調査」と告げられ、地元産という3種類のワインを順番に試飲します。実は、3つとも中身はまったく同じワインです。そのうえで「どれが一番おいしかったですか」と聞くと、半数以上の55%が「最初に飲んだワイン」と答えました。残りの2番目と3番目は、ほぼ同じくらいで、それぞれ25%弱にとどまりました。

中身は同じなのですから、味で差がつくはずはありません。それでも「最初の一杯」が選ばれる。これが初頭効果です。しかもこの傾向は、ワインに詳しい人にも同じように表れました。たとえ知識があっても、順番の影響を受けてしまうということです。

面接は、何番目が有利か

この効果は、人を評価する場面でも出ます。

競争率の高い求人に、10人が順番に面接を受けるとします。順番を選べるとしたら、何番目がいいでしょうか。なんとなく無難に思える真ん中あたりは、実はもっとも記憶に残りにくい位置です。プレゼンや俳優のオーディションでも、最初の人と最後の人が選ばれやすいことが知られています。

つまり、評価される中身が同じでも、何番目に登場したかで結果が変わりうるということです。

私自身が、自分のバイアスに気づいた話

実はこの効果に、私自身がはまりかけたことがあります。

以前、英語の動画コンテンツを中国語に展開しようとしていたときのこと。翻訳を担当してくれる人を探すため、ペンシルベニア大学のバイリンガルの学生さん10人近くに、1週間ほどかけて面接をしました。すべての面接を終えて強く残っていたのは、「最初に面接した人が一番良かった」という印象です。

オファーを出す寸前で、ふと立ち止まりました。これは初頭効果ではないか、と。面接の印象だけで決めるのは危ういと感じました。そこで全員に、30分で英語から中国語への翻訳サンプルを作ってもらい、プロのライターに採点してもらうことにしたのです。

すると、最高得点を取ったのは、面接の順番がちょうど真ん中の人でした。正直あまり印象に残っていなかった人です。その人を採用し、一緒に働いてみて、とても満足のいく結果になりました。

このとき実感したのは、「初頭効果」の強さ。行動経済学を専門にしている私でも、意識しなければそのまま最初の人を選んでいました。しかし、初頭効果を深く理解していることで、立ち止まることができ、結果的に、より合理的な判断ができました。

採用も審査も、順番が評価を動かしている

採用面接、コンペのプレゼン審査、商品を棚に並べる順番。ビジネスでは、何かを順番に見比べて評価を下す場面が至るところにあります。そのどれもが、登場の順番に評価を引っ張られている可能性があるんですね。

私が翻訳者選びの時に行ったのは、印象に頼らず、全員に同じ翻訳サンプルを課して、採点する仕組みを足すことでした。系列位置効果を深く理解していたからこそ、印象を疑い、手を打つことができた。学んでおいて本当に役に立つのは、まさにこういう時です。バイアスの名前を覚えることではなく、評価が歪む場面で立ち止まり、自分なりの確かめ方を用意できるようになること。

行動経済学を学ぶメリットってこういうところにあるんですね。

FAQ

よくある質問

Q系列位置効果とは何ですか?

いくつかの情報を順番に受け取るとき、その順番によって記憶への残り方が変わる現象です。中でも印象に強く残るのが、最初に来た情報と、最後に来た情報です。

Q初頭効果と新近効果は、何が違いますか?

最初の情報が強く印象づけられることを初頭効果と呼びます。一方の新近効果は、最後の情報が判断に効いてくることを指します。逆に言えば、真ん中に挟まれた情報は印象に残りにくいということです。

Q面接やオーディションでは、何番目が有利ですか?

最初の人と最後の人が選ばれやすいことが知られています。なんとなく無難に思える真ん中あたりは、実はもっとも記憶に残りにくい位置です。評価される中身が同じでも、何番目に登場したかで結果が変わりうるということです。

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