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最強の行動経済学 旅行の満足度はどこで決まるのか?

旅行の満足度はどこで決まるのか?

プレゼンを締めくくるビジネスパーソン(ピークエンドの法則のイメージ)

What you’ll learn

  • 旅行の満足度が「長さ」で決まらない理由
  • ピーク(最高点)とエンド(最後)で印象が決まる仕組み
  • ディズニーやレストランが設計する「終わり方」
  • プレゼンや商談のクロージングが効いてくる場面
  • コストをかけずに実践できる行動経済学の活用法

Author

相良奈美香

Behavioral Economist

相良 奈美香

Namika Sagara

行動経済学者・Ph.D.(オレゴン大学)。行動経済学コンサルティング会社代表として、アメリカ・ヨーロッパの約100社にコンサルティングを提供。イェール大学、スタンフォード大学などで講演。著書『行動経済学が最強の学問である』は累計19万部超のベストセラー。

メルマガ読者のみなさん、こんにちは。

行動経済学者の相良奈美香です。

先日、友人と去年の旅行の話になったんですね。2週間のヨーロッパ旅行と、3日間の温泉旅行。どちらが「良い旅だった」と記憶に残っているか聞いてみると、迷わず「3日間の温泉」と答えるんです。

もちろんヨーロッパも楽しかった、でも覚えているのは数シーンだけ。それに比べて温泉旅行は「最後の朝、露天風呂から見た景色が忘れられない」と。

これまでのメルマガでも、人の判断を左右するいくつかの「認知のクセ」をお話ししてきましたが、日常に潜んでいるクセはまだまだあるんですね。今日はそのひとつ、「ピークエンドの法則」のお話です。

経験の「長さ」は、驚くほど評価に残らない

ピークエンドの法則とは、人がある経験を振り返るときの脳のクセです。私たちは全体を平均して判断しているように感じます。けれど実際には「感情がもっとも高まった瞬間(ピーク)」と「最後の瞬間(エンド)」の2点で全体の印象を決めているんですね。

面白いのは、経験の「長さ」が評価にほとんど影響しない点です。2週間の旅行と1週間の旅行でも、長い方が「良かった」と記憶されるとは限らないことが研究で確認されています。人の頭の中に残っているのは、時間の量よりも「どこが一番盛り上がったか」と「どう終わったか」の2点なんですね。

医療の現場でもこの現象が確認されています。処置の時間が長くても、最後に医療スタッフが丁寧に声をかけると、患者さんの全体満足度は上がります。逆に、楽しいイベントでも最後に長い行列で待たされると、その日の印象がぐっと下がってしまう。記憶に残るのは「全体の平均」より「最高点と最後」なんです。

ディズニーとレストランが設計している「終わり方」

身近な例でいちばん分かりやすいのは、ディズニーランドの退園シーンでしょう。帰り際、キャストの方々が並んで手を振って見送ってくれますよね。あの演出が、一日の記憶をポジティブに締めくくる仕掛けになっています。

レストランが食後にサービスのデザートや小さな飴を出すのも、同じ設計です。料理の味や接客の良し悪しが全体にあったとしても、最後の「ちょっと嬉しい体験」が、お店全体の印象を引き上げてくれるんですね。

以前、旅行会社のJTBさんのビジネスイベントにコンサルさせていただき、イベントを設計したことがあります。そのときにも、入口と出口の体験にこだわりました。入口ではDJの生演奏で高揚感を作り、帰り際には、食品ロス削減の一環でJTBさんが開発した缶詰を記念品として渡してお見送りする。ビジネスイベントでも、最後の瞬間の印象が後日の「あのイベント、良かったよね」という評価を作るのです。

プレゼンの印象は「終わり方」で決まる

この法則がビジネスで効いてくるのは、プレゼンや商談の「終わり方」です。

30分のプレゼンで中身がどれほど充実していても、最後の締めがバタバタと終わってしまえば、記憶には「慌ただしかった」という印象だけが残ります。逆に、内容が平均的でも最後の1分にしっかり要点を置いて相手に感謝を伝えて終えると、「いいプレゼンだった」と記憶されやすくなるんですね。

商談のクロージングも同じです。1時間話した内容のほとんどは、相手の頭の中では細部まで残りません。残るのは「どこで一番気持ちが動いたか」と「別れ際にどう感じたか」の2点なのです。

自分の仕事を振り返ってみると、どうでしょうか。資料の完成度や話す内容にエネルギーをかけるのは当然として、「終わり方」にどれくらい意識を向けてきたか。ここはコストをかけずに実践できる、行動経済学の活用法のひとつです。

FAQ

よくある質問

Qピークエンドの法則とは何ですか?

人がある経験を振り返るとき、「感情がもっとも高まった瞬間(ピーク)」と「最後の瞬間(エンド)」の2点で全体の印象を決める、という脳のクセです。全体を平均して判断しているように感じますが、実際には残るのはこの2点なのです。

Q経験の長さは満足度に影響しないのですか?

ほとんど影響しないことが研究で確認されています。2週間の旅行と1週間の旅行でも、長いほうが「良かった」と記憶されるとは限りません。頭の中に残るのは時間の量よりも、「どこが一番盛り上がったか」と「どう終わったか」です。

Qピークエンドの法則はビジネスでどう使いますか?

プレゼンや商談の「終わり方」に効いてきます。内容が平均的でも、最後の1分に要点を置いて感謝を伝えて終えると、「いいプレゼンだった」と記憶されやすくなります。資料の完成度だけでなく、締めくくりに意識を向けることがポイントです。

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