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2022年ワールドカップに出場する32チームを観戦するために世界中が集まる中、人はいつもと違う行動をとりがちです。それを行動科学の視点から解明してみました。

ソーシャル・コネクティビティ:流行に乗りおくれたくない帰属欲求

ワールドカップを観戦する多くの人の動機は、帰属欲求に起因しています。試合自体に興味があるのももちろんですが、試合の戦略に関する熱い議論や勝負予想のディスカッションに加わり、同志一体感を共用したいと思う欲求です。またこの共用感は、私たち自身に良い心理的影響を与えていることが調査結果で出ています。何百人ものサッカーファンを対象とした調査では、チームへの帰属意識が高いほど、自尊心やポジティブな感情のレベルが高くなることが示されています。それだけではなく、疎外感、孤独感、うつ病などのネガティブな感情に対する緩衝材としても機能するという調査結果も出ています(Wann, 2006)。また、日本国チームのユニフォームを着ている人を見かけるだけで、即座にその人とつながりを感じることも経験したことがあるのではないでしょうか。このようなアイデンティティの共有は、心と心のコミュニケーションを高め、ファンの間で価値観を共有しているという感覚を高めることができるのです。

 内集団バイアス:私たちの味方か、それとも敵か

スポーツイベントから帰るときに両チームのファンを調査した研究では、ファンは、自チームのファンのほうが競争相手チームのファンがよりも良いスポーツマンシップを提示していたと答える傾向があることがわかりました(Wann & Grieve, 2005)。また、アメリカの心理学の調査によると、私たちは、自分と同じ国のユニフォームを着ている人をより人として信頼できると感じ、反対に違う国のユニフォームを着ている人は人として信用できないと感じると報告されています。それは、私たちは自分と同じ集団に属する人を無意識に特恵する傾向があることが理由と分かっています。これは、私たちは特に根拠がなくても、自分自身や自分の属する集団について肯定的に感じたいと思うものからなのです。 

 心理的没個性化:「無責任な」ファンの行動

心理的没個性化は、人々が自分自身の個性や自己認識の感覚が低下したときに起こり、自己責任の感覚の低下を招く可能性があります(Diener et al.)。それにより、普段絶対しないような行動が、試合後には起こってしまう可能性が高くなるのです。例えば、国によっては、試合後ファンが車をひっくり返したり、窓ガラスを割ったり、路上で火をつけたりするのを見かけることがあります。これは、みんなが同じサッカーのユニフォームを着ていたり、顔にペイントしていたりと、群衆に紛れ込んで無名になることで起こりやすくなります。無名になることで、人々は自分の規範ではなく、乱暴な振る舞いをする他の人含む集団の規範に適した行動をとる可能性が高くなるからです。こういう無責任な行動が世界で報道される中、日本の試合後のゴミ拾いをする姿勢は世界でも素晴らしいとよく報道されています。

ワールドカップを観戦するしないにかかわらず、行動科学というレンズを通して、スポーツに関連する自分の現在または過去の行動を振り返ってみてください。今まで不思議だった行動がもっと理解できるかもしれません!

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